別荘などで、たまにしか薪を焚く機会が無いという場合は、自分で薪割りなどはせず、最初から割って束ねてある薪を買って来て使うというケースも多いかもしれませんが、私に言わせれば、これは暖炉の楽しみの半分しか味わっていないとさえ言えます。
と言っても、薪割りがそんなに楽チンで、誰でもサクサク薪が割れるというわけではありません。
私も自分で薪を割ってみるまでは、「スッ」「トン」「ハラリ」とまるで武道の達人のように力を込めるともなく薪を割るという絵を思い描いていたのですが、最初の一振りで、そのイメージはもろくも崩れ去りました。おっかなびっくり振り下ろした程度では、丸太にわずかに跡がつく程度で斧は跳ね返されてしまいます。
むやみと力を入れるわけではありませんが、太い丸太になると、遠心力と重力をうまく斧のヘッドに乗せて、丸太にヒットさせた衝撃が斧の柄を通して脳味噌に響くくらいのパワーは加えないと、こなしていくことは出来ません。
また、特に慣れないうちは、へっぴり腰で薪を捉え損ねた斧が足元を襲ったり、当たり所が悪くて弾けた薪が手元に飛んできたりするので、油断は禁物です。 私も、割りにくい薪と格闘していて「こんちくしょうモード」に入った時に、薪ではなく自分の履いている靴をぱっくりと割ってしまったことがあります。その時は幸いかすり傷で済みましたが、そんな私のような人間のために、爪先に鉄芯の入った安全長靴(安全靴のゴム長版)というのがあって、私も最近はさすがに自分の靴を割ることは無くなりましたが、念のためこれを履いて薪割りをするようにしています。
それでも、うまく芯をとらえてきれいに薪が割れた時は気持ちの良いものですし、この瞬間だけはやはり自分が達人になったような気になります。 我が家に遊びに来た友人に「薪割り体験」をしてもらうこともよくあるのですが、うまく割れた時に、ついつい得意げな顔をしてしまうのは、誰でも同じのようです。
ところで薪割りをするにも、割り易い木と割りにくい木があります。しかし、割りにくい木をうまく割る、これがまた薪割りの醍醐味でもあるのです。