一方、住んでいた埼玉の賃貸住宅がちょうど建て替えをすることになり、3月いっぱいには立ち退かなければならないことになりました。 私は一刻も早く移住したいという気持ちがありましたし、今さら都会でもう一度引越しをする気にはなれませんでした。幸い、土地を購入した不動産会社で、同じ町内の借家を紹介してくれたため、4月から建物が完成するまでそこで仮住まいをすることにしました。
聞けば、コンピュータソフト開発という私の仕事が「不安定な業種」であるということが理由とのことでした。こういった場合に、どの程度まで本当の理由を伝えてくれるものなのか分かりませんので、実のところは、特殊な勤務形態など、私の個人的な事情が問題だったのかもしれないとも思います。また、地元の銀行にとって、東京の名前も知らない企業の社員に融資をするということは避けたかったのかもしれません。
しかし、実際に「業種が問題」という点も少なくとも理由の一つだったのだとすると、公的資金でようやく支えられようとしている金融業界に、いやしくも21世紀を背負って立つべき情報産業を否定されたということになり、まったくもって笑止千万と言いたいところでしたが、現実問題として融資が下りなくなったのですから、そんなことを言っている場合ではありませんでした。
とにかくこの山さえ越えれば、と思っていただけに、さすがにショックでした。どこからも融資が受けられなかったらどうなるのだろうという不安が広がって来ました。
しかし、基本的には、自分に何か落ち度があったとか、自分で大きな間違いをしたといったことではありませんので、悩んでも仕方が無いと、私は気を取り直すことにしました。
さっそく、不動産会社や家をお願いした建築家の方といろいろ相談したところ、他の地元の銀行や信用金庫であれば、融資が降りる可能性が十分あることや、設計を一部手直しして公庫仕様にして、公的融資を利用する方法もあることが分かり、少し気持ちの余裕を取り戻すことができました。
この際、いっそ公的融資に切り換えた方が、返済額の面で有利になるかもしれないとも思いましたが、内装などの仕様を変更しなければならなかったり、手続きの問題で着工が遅れることなども予想されましたので、まず私達は、不動産会社の紹介してくれた別の銀行の融資に賭けてみることにしました。