案内された物件は、集落の中の土地、中古別荘、山林のまま分譲されている土地、休耕地、果ては元の開発業者が倒産したため未完成のまま売りに出ている建売別荘など、バラエティーに富んでいました。
また、物件のエリアも、八ヶ岳南麓だけではなく、白州などの南アルプス山麓も含めた広い範囲に渡っていました。
こうして具体的に業者さんを訪ね物件を案内してもらったとはいえ、この時は良い物件があったら決めようという気は正直言ってまったく無く、それどころか本気で田舎暮らしをするのかどうかも、まだ決断してはいませんでした。
実はこの時、坪単価も広さも手ごろで、南アルプスと富士山が敷地から見え、近くに林などもあるという、なかなか良さそうな土地があったのですが、そんな訳で何の交渉もしませんでした。この土地は、今から考えても私がその後見たすべての物件の中で3本の指に入る物件だったような気がしますが、このような大きな買い物は縁のものと考えるより仕方ないと思います。結局その土地は私には縁が無かったわけです。
我が家の場合、特に資産があるわけではありませんので、共稼ぎで貯めた貯金を頭金に、ごく普通に住宅ローンを組んで資金とするしかありません。ところが、中古別荘物件はこの住宅ローンがまったく借りられないというのです。
ちょうど不良債権問題で、銀行の貸し渋りが社会問題となっているご時世、別荘地や中古の別荘などには、銀行が担保価値を認めないため、都会に所有している不動産を担保に入れるなどという場合でなければ、住宅ローンは組めないということでした。また、住宅金融公庫などの公的融資ならばと考えても、別荘は公庫の規格で建てられていない場合が多いため、それも難しいということです。
実は田舎暮らしを志向する中には、人生最大の買い物を中古の別荘などを購入することで格安に済ませ、その後の人生を余裕を持って過ごすことが出来れば、という思惑もあったのですが、少なくともこの地域には中古とはいえ我が家の自己資金だけで購入できるような物件は到底無く、結局この目論見は実現しませんでした。
それにしても、同じ人間が住宅を購入するのに、土地を新たに購入して住居を新築する時はローンが組めても、それより遥かに安い中古別荘ではローンが組めないというのは妙といえば妙ですし、市場では千万単位の価格で流通している物件が、銀行の評価では最初からゼロ査定というのも、購入する側にとっては腑に落ちない話です。
そして、この銀行ローンでは、私自身後で思わぬ苦労をすることになりました。